運営堂の森野さんと定期的にお話ししていますが、「頑張っているのに、なぜ制作会社は儲からないのか?」というテーマで、膝を打つような話しになり、せっかくなのでブログ記事に全三回の記事として公開いたします。今回は最後の第三回目です。AI時代に制作単価が暴落するリスクを回避し、いかにして利益率の高い継続案件を勝ち取るか。その具体的な「稼ぎの型」について考えます。
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制作費の価値が「ゼロ」に近づく未来


そうですね。はっきり言って、「作るだけ」の仕事はこれからどんどん安くなるしかないと思います。AIの生産性は凄まじいですから、10人の社員で必死に作っている会社よりも、AIを使いこなす1人の方が安くて早い、なんてことが当たり前に起こりますから。

前回で、社長が覚悟をもって制作だけの仕事から新規事業を興す気持ちで取り組む必要があるというお話しがありました。これって具体的にはどんな形なのでしょうか?

道は一つしかありません。「量」で勝負するのをやめて、「質(関係性)」に全振りすることです。クライアントから「言われた通りに作る下請け」として見られているうちは、相見積もりで叩かれて終わりです。しかし、クライアントのビジネスを成功させる「軍師」や「伴走者」になれば、30万円の案件は200万円のプロジェクトに化けます
30万円が200万円に化ける「聞き出し」の技術

「30万円が200万円に化ける」というのは、具体的にどういうロジックなのでしょうか?

多くの制作会社は、クライアントから「サイトが古いからリニューアルしたい、予算は30万です」と言われたら、「わかりました、30万でできるLPにしましょう」と答えてしまいます。それが最も早く制作できるからですが、これが「御用聞き」の思考停止で、今後危なくなっていきます。

それだと、30万円の作業をして終わりですもんね。

そう。本当に必要なのは「作る前に理由をしっかり聞くこと」なんです。「ちゃんとした人」は、作る前にまず聞きます。またGA4などを見る人もいます。その結果「そもそも今のサイトのボトルネックはデザインではなく、広告のキーワードのズレにある」とか「この導線を改善すれば、リニューアルしなくても売上が1.5倍になる」といった課題を、クライアントとともに明らかにしていきます。

相手が「やりたいこと(リニューアル)」を聞くのではなく、「解決すべき課題」を見つけ出すわけですね?

その通りです。「30万円で箱を作り直しても成果は出ません。でも、100万円かけてこことここの運用を改善し、1年間伴走すれば、200万円の利益が上乗せできます」と提案できればどうでしょう。多くの経営層は、30万円の「消費」よりも、200万円を生むための100万円の「投資」を選びます。こうして、単発の制作が、高単価な継続案件へと変わっていくんです。
御用聞きからの脱出方法

確かに提案力が大事だと思うのですが、現実問題として、制作会社のスタッフが急にSEOも広告もアクセス解析も完璧にこなすというのは難しいですよね?

おっしゃる通りです。ここが多くの制作会社が陥る罠なんですが、「全部自分たちで勉強して、全部内製化しよう」とするから失敗するんです。餅は餅屋で、SEOにはSEOの、広告には広告のプロがいます。ただ制作会社は意外と「外部パートナー」との繋がりが希薄なことも多いです。

なるほど。自社で急にやるのではなく、まずは外部とどうやって繋がるかが大事だと。確かにうちも相談を受けることがあります。

本当に稼げている制作会社は、自分たちができないことを相談できる「信頼できる外部の脳みそ(パートナー)」をいくつか持っています。クライアントから相談された時、「それはうちの専門外です」と断るのではなく、「信頼できる専門家がいるので、彼らの知見を入れて設計します」と返せるか。これが「窓口」としての価値を高めます。
最初に学ぶべきは「マーケティング」ではなく「ドメインとサーバー」

外部パートナーと提携しながら、制作会社自身は最低限、何を学ぶべきでしょうか?やはりマーケティングやGA4でしょうか?

いや、もっと手前の、土台の話です。「ドメイン」や「サーバー」といったインフラ周りの知識が、驚くほど欠落しているケースが多いんです。

インフラですか。確かにデザインやコーディングには詳しいけれど、その辺りは「触りたくない」という声も聞きます。

私たちがコンサルに入るとき、最初にドメインやサーバーのログイン情報を聞くんですが、制作会社の方から「なんでそんな情報が必要なんですか?」と真顔で聞かれることがあります。「ドメインの管理権限が誰にあって、更新が止まったらどうなるか」「今のサーバーのスペックで、アクセス増に耐えられるか」を知らずにサイトを作っている。

怖い話ですね。見た目は綺麗だけど、誰が管理しているか分からない状態……。

派手なマーケティング論を学ぶ前に、まずは構造を理解すること。「建築家」が家主の相談に総合的に乗るために、建物の構造を理解するのと一緒ですね。それができて初めて、クライアントから「この人に任せておけば安心だ」という信頼を勝ち取ることができます。
これは「新規事業」を立ち上げる投資である

つまり、まず御用聞きから脱出するために必要なのは、制作スキルを磨くことではなく、「インフラ(構造)を理解すること」と「理由を聞くこと」と「パートナー選定」ということですね。

はい。ただ、これを実現するには、「現場の作業」を一旦止めてでも、教育と仕組み作りに投資する覚悟が必要です。これは保守の延長戦ではなく、「コンサルティングという新規事業」を立ち上げるくらいの覚悟で取り組まないと成功しません

「忙しいから無理」と言って工場のラインを回し続けるか、一度ラインを止めてでも「建築家」への転換を図るか。その決断が、AI時代にはますます重要になりそうですね。

結局、クライアントのビジネスを守れる会社だけが、本当の意味での利益を享受できる時代になります。バカ正直に「内装工事(制作)」だけで戦おうとせず、もっと賢く、他社の力やAIの力も借りながら、ビジネスモデルをアップデートしてほしいですね。
以上で「頑張っているのに、なぜ制作会社は儲からないのか?」のシリーズは終わりになります。
本シリーズですが、想像以上の反響を頂けてとても嬉しかったです。ただ、「どこでパートナーを探すのか?」「どうやってマーケティングを学ぶのか?」「どうやったら覚悟が決まるのか?」といった、まだまだ話し足りないことが出てきました。そこでこの森野さんとの雑談シリーズは、今年のテーマとして継続したいと思っています。また次回をお楽しみに!

