罠に落ちるか、希望の道を行くか。2026年のWebデータ活用予測

罠に落ちるか、希望の道を行くか。2026年のWebデータ活用予測

新年おめでとうございます。

今年も恒例のアクセス解析業界予測をお届けします。昨年の「アクセス解析の終焉と新時代の幕開け」はおかげさまで多くの反響をいただきました。今年も新年のエンタメとして楽しんでもらえたらと思います。

昨年の予測の振り返り

まず昨年の振り返りですが、予測は概ね当たっていたと考えています。

データへの注目度があがると同時に、GA4を諦めたという声も聞こえてきて、二極化は進んでいると感じますし、GA4のAdvisorも含めAIエージェントもたくさんのツールメーカーが出してきました。

また昨年の記事で「GoogleとMicrosoftは世界中のサイトにタグを設置することを主目標とし、それを達成した後は次第に適切な距離を置く」と書きました。その文脈で触れたMicrosoft Clarityについて、興味深い動きがありました。

昨年11月、Microsoftはパブリッシャーに対してClarityタグをMicrosoft広告で必須とする方針を発表しました。

これは配信される広告の透明性強化の側面ももちろんありますが、それも含めて半ば強引に広告プラットフォームへの誘導を進めているように映ります。つまり、無料ツールとしてのClarityの独立的な発展よりも、広告事業との連携を優先する姿勢の表れです。
一言でいうと「早く行動データが欲しい」ということで、やはりタグ設置が目的なのだと思います。

アクセス解析の終焉と新時代の幕開け。2025年のWebデータ活用予測
新年おめでとうございます。今年はじめのブログ記事として、2025年アクセス解析業界の予測を行ってみます。私自身、過去にはユニバーサルアナリティクスの終焉や、Mi…
qazero.com

今年は趣向を変えて、海外予測から

さて、今年は趣向を変えて、海外の2026年予測記事を紹介するところから始めてみます。

AIによる分析の民主化

最も多く語られているのがAIの進化です。

“By 2026, **40% of analytics queries will be created using natural language**, dramatically lowering the barrier to advanced analytics.”
(2026年までに、分析クエリの40%が自然言語で作成されるようになり、高度な分析へのハードルが劇的に下がる)

WhiteScholars “The Biggest Data Analytics Trends of 2026”

複雑なSQLなどを書かなくても、普通の言葉でデータに質問できる時代が来る。GA4にもGemini搭載のAnalytics Advisorが導入され、この流れは加速しています。

“AI is turning those numbers into sentences and suggestions.”
(AIは数字を文章と提案に変えている)

Acalytica “The Future of Web Analytics: Trends You Must Ride in 2026

プライバシー・ファーストとクッキーレス

プライバシー対応も大きなテーマです。

“Analytics tools that work without tracking people across the web will dominate.”
(ウェブ上で人を追跡しない分析ツールが主流になる)

Acalytica “The Future of Web Analytics: Trends You Must Ride in 2026

GDPR、CCPAなど規制対応は必須となり、ファーストパーティデータへのシフトが進む。これは昨年の予測でも触れた通りです。

市場規模は拡大

市場自体は成長を続ける予測です。2032年には約200億ドル規模に達するという予測もあります。

“The web analytics market shows significant expansion: from $7.54 billion in 2024 to $8.89 billion in 2025 with a 17.9% compound annual growth rate.”
(Web解析市場は大きな拡大を示しており、2024年の75.4億ドルから2025年には88.9億ドルへ成長し、年平均成長率(CAGR)は17.9%に達した)

The market will expand to approximately $20.09 billion by 2032 and grow at a compound annual growth rate of 18.1%.
(市場は2032年までに約200.9億ドル規模に拡大し、年平均成長率(CAGR)18.1%で成長すると見込まれている)

Octopus Intelligence “Future Trends in Web Analytics

その主要因はAIとプライバシーなどに起因する企業を取り巻くデータ環境の変化です。どちらかというとデータ活用の領域に踏み込んできているといえます。


But why is this happening? Multiple major factors are converging simultaneously.
(なぜその変化は起こっているのか?複数の主要因が同時に発生している)

  • Updated privacy regulations compel analytics tools to transform.
    (プライバシー規制の強化により、アクセス解析ツールは変革を迫られている)
  • Eliminating third-party cookies now requires companies to find new ways to gather data.
    (サードパーティCookieの廃止により、企業は新たなデータ収集手法を見つける必要に迫られている)
  • AI and machine learning technologies create innovative opportunities.
    (AIおよび機械学習技術は、革新的な機会を生み出している)
  • Navigating customer journeys requires handling more complex scenarios due to multiple device usage.
    (複数デバイスの利用が進む中で、顧客ジャーニーの把握には、より複雑なシナリオへの対応が求められている)
  • Businesses want real-time insights to act quickly.
    (企業は迅速に行動するため、リアルタイムのインサイトを求めている)
Octopus Intelligence “Future Trends in Web Analytics

AIエージェントへの期待は眉唾かもしれない

海外予測で特に目立つのが「AIエージェントがデータから自動で考えてくれる」という期待です。こうした予測が生まれ、それに投資が集まり、テクノロジーが発展する。この循環自体は否定しません。

しかし、ある種の人たちにとって、この期待は裏切られると予測しています。

期待値の問題

AIエージェントとは、総じて言えばLLMを多段階で組み合わせることによる、インプット情報に対するアウトプット情報の生成です。データを入れると、何らかの示唆や提案、場合によって生成が行われる。これ自体は非常に有用な技術です。

しかし、ここには確実性の問題が立ちはだかります。
未来に対して確実性を持つということは、論理的に不可能です。
過去のデータには、これから起こるイノベーションの情報が入っていないからです。

問題はAIエージェントの性能ではなく、人側の期待値にあります。

「データを入れたら、自分たちのビジネスを導いてくれる答えが出てくるはず」

この期待を持つ人は、罠にはまっています
データから自分たちのビジネスをドリブンしてもらいたいと考える人にとって、AIエージェントは期待外れになる。
これは技術の限界ではなく、期待の設定ミスです。

2026年の予測:二極化は継続、そして新たな潮流

さて、ここからが本題です。

しかしAIにより新たな潮流が生まれる。
そしてその潮流は、罠にもなり得るし、希望にもなり得る、
と考えています。

データ重視派

上記で紹介したような変化に敏感になり、積極的に取り入れていく層です。

データは大事だと考え、データ取得を真剣に設計する人たち。 GA4のGemini統合やBigQueryとの連携強化など、テクノロジーの進化を追いかけていきます。

GA4離れ派

一方で、ウェブサイト自体の重要性が相対的に下がる中、「GA4なんて見ていられない」という人は確実に増えるでしょう。SNS、アプリ、動画プラットフォームなど、顧客接点は多様化しています。

ウェブサイト「だけ」のデータに時間を割く意味が見出せなくなる。
定型レポートで最低限の状況把握をするだけになっていく層です。

新たな潮流:罠と希望

AIの普及によって、企業内のサイト運営者やマーケターが自分で調べたり、質問したりできるようになりました。その結果、代理店やSEO業者などへの「突っ込み」が増えています。
そうするとエージェント側もAIを活用して理論武装が行われます。

これは2026年、さらに加速すると予測しています。

AIを使いながらお互いに理論武装する中で、必然的にデータを使っていくことになる。
企業内のサイト運営者やマーケター側も代理店側も、です。
これはGA4に限った話ではないし、従来の「アクセス解析」とは異なる新しい潮流です。

しかし、この潮流には罠と希望の二つが混在しています。

罠:時間の浪費に気づけない

現場でよく見かけるのはこんな状況です。

  • 広告代理店がURLパラメーターを適切に設定していない。
  • 制作会社がGTMのタグを間違えている。
  • そもそもデータの取得が壊れている状態で、AIに問い合わせる。

当然、AIは間違った推論を返します。しかし、誰もそれに気づかない。

企業内のサイト運営者やマーケター側と代理店がお互いに知識がないまま、AIが出した数字を根拠に応酬し合う
時間とお金が浪費されていく。

こうした不毛な議論を、AIは止められないどころか、加速してしまいます。これが罠です。

希望:人間にしかできないことがある

一方で、希望もあります。

データ活用のプロは自らの仮説をAIと壁打ちしながら、必要に応じて適切なデータを投入していく
「データから何か見つけて」ではなく、「この仮説を検証したい」という姿勢で取り組みます。

そして、ここにAIに負けない人間の価値があります。

AIは過去のデータからパターンを見つけることは得意です。

  • 新しい仮説を立てること
  • 文脈を読み取ること
  • 人のその場の気持ちを理解すること
  • 困っている人に人格で寄り添うこと

これらは人間にしかできません。
AIが進化すればするほど、逆説的ですが、人間の個性や専門性の価値は高まると考えています。

なぜなら、AIが汎用的な作業を代替するほど、「その人にしかできないこと」「その文脈でしか生まれない価値」が際立つからです。
ドラッカーが指摘したようにビジネスはイノベーションの連続といえますが、それは人々のインスピレーション、発想から発生します。

昨年QA ZEROへのお問い合わせで感じたこと

昨年、QA ZEROでは「広告代理店がやっていることがわからなすぎるので、自分でもデータを見れるようになりたい」という相談が増えました。
顧客側が、第三者の言いなりになっている現状に気づき始めています。
そしてGA4にこだわる必要もなく、もっと隙間時間でデータを活用したいと考え始めています。

多くの方が「GA4は難しく自分で使いこなすのは現実的ではない」と感じています。 AIを使っても、先述の通り罠に落ちるリスクがあります。

プロの手が足りません

しかし正直に言えば、私たちQA ZEROチームだけでは、この問題は解決できません。

我々は、プロがツールの操作説明や煩わしい設定、無意味なレポート作成の時間から解放され、本来の仮説設定や意思決定支援に集中できるべきだと考え、時間短縮に主眼を置いてツールを作っています。
しかしそれは、より本質的な意思決定の仕事に役立てるためで、もちろんツール単体では意思決定できません。

我々は人数が少なく、プロレベルの意思決定サポートができる手も足りません。
いくらユーザーが「データから自分達で考えれるようになりたい」と思っても、お手伝いに限界があるのです。

本来、企業内のサイト運営者やマーケターが気になっている「データからの気づきを得る」ためには、ツールの間に立つ第三者、つまりデータを駆使して意思決定と戦略をサポートできるプロの力が必要です。

企業を取り巻くデータ環境は激変しています。
私たちは、アクセス解析を「正しさを競う世界」から、「意思決定を前に進めるための道具」へと戻したいと考えています。

プライバシー時代に正しさにこだわりすぎることは、AI時代に致命的な”遅さ”につながります。データを介した新しい協業の形が必要です。

Help Others, Things Change -誰かを助ければ何かが変わる

改めて私の今年の予測を振り返れば、一部の大企業はGA4を含むデータテクノロジーに投資し、一方で多くのGA4の高い学習コストに挫折した人達は、悩みを抱えながらアクセス解析から離脱していくという、昨年の予測を踏襲したものです。

さらに今年はAIによって、データの問題に気付かずに時間を浪費してしまうという第3の罠も追加しました。
これは誰にとっても不幸な未来です。

一方で希望もあります。
企業内のサイト運営者やマーケターの人達は、自分達の判断をサポートして欲しいと思っているし、ツールはなんでもいいと思っています。

私たちはAI &プライバシー時代において、アクセス解析はもう一段、プロも企業内のサイト運営者やマーケターも時間を浪費せず、素早く意思決定し、個性を発揮したインスピレーションを得れるものに変化すべきだと考えています。
QA ZEROの兄弟製品であるQA Assistantsを無料にしたのも、その思いからです。

困っている人を助ければ、何かが変わる。
企業内のサイト運営者やマーケターはデータを使いたいし、意思決定をサポートして欲しいのに、時間を浪費するしかない状況に困っています。

AI時代は、データとAIを適切に使っていければイノベーション爆発の時代です。

データ活用の専門家、ビジネスの現場を知る人、AIを使いこなす人達。
これまで交わることのなかった人たちが、データという共通言語で繋がり始めれば、世の中はもっと面白くなるし、AIに仕事を奪われる心配などは、そもそも関係なくなります。

私が思い描く、希望のストーリーです。

まとめ:2026年、罠と希望の分岐点

2026年の予測

  • 二極化は継続し、劇的な変化は起きない
  • AIによる理論武装が進み、意識的にも無意識的にもデータを使う場面は増える
  • しかしそれは、罠にもなり得るし、希望にもなり得る

罠に落ちる道

  • AIに答えを求め、壊れたデータで不毛な議論を繰り返す
  • 難しいツールの習得や費用捻出の算段などに苦労する
  • 不毛な説得に時間を浪費する

希望の道

  • 人間にしかできないことに集中する
  • 困っている人を助けるという原点に戻る
  • さまざまなツールを併用し、「データを適切に扱えるプロ×事業を行う企業×AI」のコラボレーションでイノベーションに繋げる

変化の時代は、見方を変えれば誰もいない可能性だらけの道が拡がっていると感じています。

今年は私達QAチーム一同、より多くの外部のプロの力もお借りして、この希望のストーリーを進めるよう精進したいと考えています。

本年もよろしくお願いします。