Yuwaiの田中広樹さんと丸山がCookie問題やらP-MAXやらGoogleやらいろんなことについて話しました。

Yuwaiの田中広樹さんと丸山がCookie問題やらP-MAXやらGoogleやらいろんなことについて話しました。

Cookie問題って日本ではそんなに話題になってないものの、海外では喫緊の課題として取り組むべきものとなっていますよね。そんなわかったようでわからないCookie問題などについてYuwaiの田中広樹さんと丸山で話し合ってみました。1万5千文字ぐらいの記事なのでお時間のあるときにどうぞ。

Cookie規制でGoogleやMetaが追い詰められていった先にある暗い未来

丸山
丸山

Cookie問題の何となくの方向としては、Cookieレスが進んだ結果、GoogleやMetaが追い詰められていくということであってますか?

田中
田中

追い詰められていってますね。

先日、LIFTの岡田さんも記事にされていましたけど、特にGoogleの決算を見るとやっぱりディスプレイ広告が結構よろしくないというか、足を引っ張りつつあるかなという状況です。

ディスプレイ広告ってAdSenseの普及によっていろんなサイトで広告出るようになったんですけども、結局ターゲティングも厳しくなってきているので、これが改善しない限りはディスプレイでGoogleが収益上げるの難しいよねっていう話と、Googleの収益を上げるのが難しければパブリッシャーも収益を上げづらいよねっていう話があります。

本当にMFA(Made for Arbitrage※)というかもう広告だけのためためじゃないんですけど、記事を見るために広告を見させられてるっていうような世界線に今来てるっていうところがあって。

広告のために作られたサイト「MFA」とは?:問題や影響の本質

丸山
丸山

なるほど。やはり決算書を見るときついのかなっていう感じですか。
Googleって何らかのCookie代替手段みたいなものを出してきているのですが、そんなにきついんですか?

田中
田中

そうですね。きついっていう感じですね。

Cookieが使えなくなると、運用型広告で影響大きいのがターゲティングと計測なんですよ。計測に関してはファーストパーティCookieを使うことで何とか代替手段は取れているんですけど、サードパーティCookieに代わるターゲティングの手段、いわゆるGoogleじゃないドメインでの広告表示なので完全にAdSenseなんですが、ターゲティングの代替手段が今のところこれといったものがなくて、今話題のプライバシーサンドボックスに頼らざるを得ないっていう状況です。

しかしプライバシーサンドボックスって、他のメディアとかが本当にそれってプライバシー保護されるの?みたいな感じで疑っています。「うちは使わない!」みたいな話とかも出ているので、プライバシーサンドボックスが実装されても、おそらくCookieに代わるほどのものではないでしょう。

そうするとやっぱり、プライバシーサンドボックスをもってしても、以前ほどのディスプレイ広告のターゲティングは厳しめなのかなっていうのが今のところ僕の見立てです。

丸山
丸山

なるほど。ちょっと不勉強でプライバシーサンドボックスは、聞いてはいるんですけど仕組み的に理解はしていなくて。どんな仕組みなんでしょうか?

田中
田中

ざっくり言うと、プライバシーサンドボックスに対応したブラウザの中だけで興味関心とかを割り出して、個人が特定できないようにプライバシーを保護した状態で、ある程度のターゲティングができるっていう仕組みです。クライアントサイドで計算してターゲティングさせるというとわかりやいでしょうか。

丸山
丸山

確かにメディアの方が「大丈夫なの?」って思うように感じますね。もし精度が高ければ、それってどこまで匿名なのっていう部分でブラックボックスすぎそうなイメージがありますから。

田中
田中

はい。だから、一部で使いたくないなって言ってるメディアさんとか媒体さんもいるっていうことなんだと思います。サードパーティCookieに代わるターゲティング手段としてはないことはないけど、精度がどうなのとか、ちゃんと使ってくれるの?って意味では疑問視がされているんですよね。

丸山
丸山

Googleとしては売り上げをキープしなきゃいけないとなるので、いわゆるテレビのCMみたいな感じで、広告を見たら記事が見れますよと。

田中
田中

それか、もう本当に広告だらけのサイトを作るしかないですよね。

ターゲティング広告ってAdSenseをやっているとわかるんですけど、ワンクリックの収益って結構大きいんですよ。それができなくなる。かつAdSenseも、クリックベースの収益からインプレッションベースの収益に切り替わってくるので、クリックさせるぞみたいな広告が減るような気はしてはいるんです。インプレッション課金になれば表示回数だけですから。

まだそのあたりがまだ始まったばかりというか、やっとAdSenseのインプレッション課金などをはじめたくらいなので、影響が出てくるのは多分もうちょっと先で、いろいろごちゃごちゃしてるのが今という感じですね。

今後のクリック単価は右肩上がり

丸山
丸山

広告主からしてみたら、とにかくばら撒いてたくさん来てもらってコンバージョンしてくれたらいいなみたいな感じですよね。単純に広告主としては費用対効果が悪くなるように思うのですが、どうでしょう?

田中
田中

言葉が悪いですけど、高単価の商材だったら詐欺みたいな感じでどっかで引っかかれば元が取れるっていうこともあるわけで。

広告費用対効果ってクリック単価で大きく変わってくるので、そういう方向にいくのが心配です。

丸山
丸山

例えば水産物で普通に安くて美味しいものを売っている人が、CPAが高騰しすぎてコンバージョンしても利益が出ないから露出が減っていくということがあり得るわけですね。

田中
田中

なりやすいでしょうね。
CPAが上がるのでそれが合うメディアに出すとなると、例えばGoogleだったら検索広告だすとか、ショッピング広告を出すみたいな感じになってしまいます。

丸山
丸山

確かにショッピング広告はそうですよね。ここの競争も激しくなっていく感じはあります。

田中
田中

競争も激しくなるので、クリック単価は基本的に右肩上がりにしかなってこないと僕は思っているんですよ。なぜなら、検索されるキーワードで、バリエーションに限りあるからです。そこに対して、似たような広告主が一斉にCPAに合う範囲の中で自動入札を使って成果を最大化しようとするので、変な話、お金をも持っていれば勝ちやすい状況になります。A社はクリック単価3,000円までしか許容できないけど、B社は同じキーワードにクリック単価1万円まで許容できるってなると、高いクリック単価で広告を出していくじゃないですか。

そうするとこの安く取りたい会社さんは、これを超えるようなクリック単価を設定しないといけないとなってくるので、割に合わなくなります。自動入札がどんどん最適化すればするほど競合が増えるのでクリック単価は下がらないんだけど、今後クリック単価が上がりすぎて割に合わない広告主っていっぱい出てくるだろうなと思っていまね。逃げ道がなくなります。

丸山
丸山

確かに、限りがある中で戦いが激しくなったらそうなるしかないですよね。大手はやり切れるけど…ウォルマートが地元の商店街をなぎ倒していったみたいな話もありましたね。ちなみに広告主は、この現状についてまだまだリアリティを感じてないですか?

田中
田中

おそらくBtoBだと感じ始めてるんじゃないですかね。BtoBのキーワードってそんなに広がらないじゃないですか。いろんな会社さんが入札していて、本当にワンクリック数千円とかざらにある状況なので、業種によっては元が取れないですね。

CPAが「Cost per Acquisition」なのでCostを分解するとクリック数×クリック単価。Acquisitionを分解するとクリック数×コンバージョン率なので、クリックで約分すると、コンバージョン率分のクリック単価になります。CPAを下げるには、コンバージョン率を上げるかクリック単価を下げるかなんですよね。

でも、これまでの話しでクリック単価ってもう下がらないから、無限にコンバージョン率上げていかないと、また元が取れないゲームになってくるっていう。

丸山
丸山

怖いですね…。
そうなってくると、悪徳商法のようにお行儀の悪い方に走らざるを得ない可能性はありますよね。この方法しか単価があわなくなってきたら、加速していく可能性もあります。

田中
田中

そうなってしまいます。だから僕は、今、本当に何も光が見えない状態になって、どんどんマイナスのスパイラルに陥っている感じがする。

広告の数値はどこまで正しい? -計測について-

丸山
丸山

計測の方はファーストパーティーCookieで何とかなるってお話がありました。例えば、広告の管理画面にあるアシストコンバージョンや直接コンバージョンはCookieの影響を受けそうなイメージがあるんですけど、実際はどうなんですか?

田中
田中

Google広告も他の広告もそうだと思うんですけどコンバージョンってかなり推定が入ってくるんですよ。実際のコンバージョン数がどうかとか、昔は確か分割して見られたのですが、今は見られなくなっている気がします。コンバージョンモデリング(※)で推定しているものが一部入っているので、実際のものとはちょっとずれが出る可能性は大いにあります

オンライン コンバージョンの推定について

丸山
丸山

ここは憶測ですが、Google自体はCookieも使えますし、IPやユーザーエージェントや携帯番号などいろんなものを駆使して、この人は多分こうであろうみたいな、推測をかなりの高精度でやっていた企業だと思うんですよね。今のところ残っている尾ひれはひれの情報だけで、Cookieがある程度の推測をできて、それによって何となく数値を出してるのかなみたいな印象はあるんですけど、やはりそんな感じなんですかね?

田中
田中

一部のユーザーアクティビティ(※)を使って推定されます。GoogleのアクティビティってGoogleアカウントから見られるので、どのウェブサイトを見たとか、どのブランドを検索したとか実は全部見えるんですよ。

ユーザー属性ターゲティングについて

丸山
丸山

マイアドセンターですね(画面を開く)。

https://myadcenter.google.com/
マイ アクティビティ

マイアドセンターからたどれるマイアクティビティは、やばいくらい丸裸です。見ない方が幸せなこともあります苦笑。

https://myadcenter.google.com/

Googleの次の一手「P-MAX」

田中
田中

Googleアカウントのアクティビティ、マイアクティビティっていうのリンクが下の方にあって、左側のメニューのマイアクティビティで、どのサイトを見たかみたいな情報が全部見られるんですよ。最悪、Cookieがなくてもこの情報があればターゲティングができるんです。

どうやってやってるのかっていうと、chromeにGoogleアカウントでログインしているとわかるんです。このユーザーはこのブラウザで、このユーザーアカウントでログインしているってわかるので、ターゲティングできるようになります。

あ…!今、GoogleってP-MAXめちゃくちゃ推してるじゃないですか。

丸山
丸山

推してますね。

田中
田中

P-MAX出るのが、Google検索やGoogleのショッピング広告、検索広告があって、YouTube、Gmail、ディスカバー、ディスプレイももちろん出るんですけど、これには共通点があります。ほとんどがGoogleアカウントにログインして使うようなサービスなんですよ。

丸山
丸山

あ!

田中
田中

だから、GoogleはこのGoogleアカウントの属性、アクティビティを使えばGoogleサービスの中ではある程度のターゲティングはCookieがなくてもできる。もし、できないとすると、ログアウトしてる状態か、一部のGoogleじゃないウェブサイトを見てるときとか。そのくらいなのでほとんどがカバーできるようになってます。計測はファーストパーティCookieを使っているし、ある程度推定しながらとか、拡張コンバージョンを使って補完はしていくので。

丸山
丸山

言ってみたら、GoogleがGoogle検索もショッピングもYouTubeといった、巨大なメディアを持っているようなものですよね。

田中
田中

そうですね。だから同じような形のYahoo!Japan、Microsoft、Facebook、TikTok、LINE、Xなどはすべて自社のアカウントで個人情報を持っているので、アクティビティも全部トラッキングできる。

大手企業はサードパーティCookieがなくなるともちろん当然収益が下がるとは思うけど、めちゃくちゃ困るのかっていうとそうでもなくて、そうならないよう今まで入念に準備しているっていうのが実情かなと思っています。

P-MAXはどんな仕組み?

丸山
丸山

まさに素人の質問になってしまうのですが、P-MAXって、「すごく成果がいいよ」「自動で何かいろいろやるよ」みたいなウリの部分しか全然知らなくて、実際にはこれってどういうもの?何が今までと違うの?というのがわかってないんです。

田中
田中

1個のキャンペーンで、アプリを除くGoogleの広告が出してる全部の面に出せますっていうのがひとつ。

もうひとつが、ユーザーの購買行動(カスタマージャーニー)を意識して広告出しますよ、ってことなんですよね。

今のユーザーってGoogle検索だけして商品を買うわけでもないし、YouTubeの動画だけ見て何かを申し込むわけでもないっていうことは、おそらく彼らはわかっている。そうなると、その一連の購買行動の中での接点を探す。検索もあればショッピングもある。ディスプレイもあるし、マップもあるしYouTubeもある中で、キャンペーン側は、検索広告やディスプレイキャンペーンみたいに、インプレッションがばらけちゃうと、突合して入札を最適化っていうのは難しいわけなんですよ。

今はそれをちゃんと一つの一連の行動として、P-MAXというキャンペーンの中で全部完結させることによって、どんな接点が一番価値を持ったのかっていうのを全部見るんですよね。こういう行動をするユーザーは価値を出すはずだみたいな推定をして、タッチポイントと言われるコンバージョンしやすい経路によって、この動画がよく見られてるから動画を出す、こういう似たような行動をするユーザーには動画を出しましょうとか、検索するときは特に入札を上げましょうみたいなパターンを見つけて、広告費をうまく使ってくれるっていうのが目標なんですよ。

丸山
丸山

わかりやすいです。

田中
田中

そうなんですけど、 その理念とか仕組みがよく伝わっていないから、広告の出稿者は中途半端に使ってしまい、P-MAXはダメだって話になっています。

丸山
丸山

そのダメだって言ってる人たちは、おそらくCPA悪化みたいな判断なんだと思うんですけど。

田中
田中

そうですね、Googleが推奨するように動画も含めて広告を出さなきゃいけないものは、ターゲティングが必要です。

今までのディスプレイのターゲティングって、この興味関心がある人とか、自分のサイトのこのページを見た人、みたいなターゲティングが直接的なターゲティングができるんですよね。年齢が何歳から何歳の人だけ広告を出すみたいな感じです。

P-MAXって実はターゲティングのようでターゲティングじゃない仕組みになっていて、広告主が提供したデータから価値を最大化する人を見つけるっていう仕組みなので、結果的にはターゲティングなんですけど、役割としてはこの指定されたデータの中から価値の高い人を見つける。なので、広告主が思ってる価値の高い人と、実際に広告主のデータをアップロードしてGoogleが判断した価値の高い人にはずれが微妙に出る。

丸山
丸山

なるほど。

田中
田中

だから広告主の知らない、広告主もわかってないような価値を持ってるユーザーを探すのが得意なのがP-MAX。そのための情報をちゃんと与えないで、指定したものがターゲティングだと思われちゃうと、ちょっと違うぞって動きをするので、皆さんそういう風に思われることが多い。

丸山
丸山

広告主が提供したデータっていうのは、いわゆる拡張コンバージョンっていう、自分たちがコンバージョンしたと思う人たちのユーザー情報をフィードバックする、みたいなことですか。

田中
田中

一番いいのは顧客リストのアップロードなので、まさにコンバージョンした人のデータをGoogleに渡すこと。

これ以外にも、興味関心とか年齢とか、こういう検索をした人みたいな設定はできるんですが、それは扱いが難しいです。

例えば、年齢が30歳代で男性というだけのシグナルを渡すと、この中から価値最大化する人を見つけるようにGoogleは動くので、やろうとしていることは「太平洋に船を浮かべて鯛を1本釣りしようとしてる人」みたいな感じになります。どこに釣ろうとしている魚がいるかわからない状態で、とりあえず「太平洋の東の方にいそう」みたいなことを広告主が言ったところでGoogleはわからない。

一方、実際にコンバージョンしたリストをアップロードするとGoogleアカウントを紐付けて、その人たちの行動や購買履歴、属性を見た上で似たような人たちについて、「あなたたちは、こう思ってるかもしれない。Googleは、こう思うよ。」みたいな部分を勝手に出してくれる。

非常にコンバージョンというか、価値の高い人にアプローチしやすいので使い方次第なんですよね。私がインハウスの支援をしてるお客さんだと、P-MAXでめちゃくちゃ当たっていて、すごくすごくうまい感じなんです。

丸山
丸山

確かに今のお話をお聞きしたら、イメージがめちゃくちゃ湧きました。そういうことですか。確かにこれは、Googleでしかできないようなサービスですね。

田中
田中

ターゲティングの仕組みがわかっていると、使いこなせるんですけど、それがわかってない人だと、こうなっちゃうんですよ。「この興味関心があって、年齢何歳代で男性」、その3つだけでも結構アバウトすぎるのでわからない。とはいえ適切ではないコンバージョンを設定していしまい、たとえばポイントサイトから来た人ばっかりだとそんなに高くないので、自社サイトのデータだからといって、アップロードすればいいわけではない。最低限Google側から見て価値が理解できるコンバージョンしたユーザーのリストが必要です。

P-MAXについてより詳しくは、田中さんの記事「誤解されているかもしれない Google 広告の P-MAX キャンペーンを改めて紐解いてみる」が詳しいです。

https://yuwai-inc.jp/blog/clears-up-common-misconceptions-about-the-p-max-campaign-and-explains-how-it-works/

AIによるクリエイティブの自動化

丸山
丸山

ちなみに、クリエイティブの管理は大変そうですけど、どうなのでしょう?P-MAXであれば動画もありますよね。

田中
田中

ここで出てくるのがGoogleの生成AIであるGemini(ジェミナイ)です。テキストなどの文字の広告文を作ってくれます。動画はまだ編集ツールの段階ですけど、持っている画像や商品のデータを使って、動画を勝手に生成してくれるってのはある。あとは画像の背景をプロンプトで変更するとか、編集機能っていうところにAIが使われ始めています。

P-MAXは基本的に全部の広告素材を入れる前提になっているので、生成AIを使うっていう文脈のアップデートも、P-MAXからなっているんだろうなとみてます。

丸山
丸山

さっきから時々背筋が凍るような未来感のある話が出てきますけど、すごいですね。テストも自動でやっちゃうような世界線がありそうです。そうなってくると、Cookieが駄目になったとしても、GoogleがP-MAXの流入経路を多数確保できていればそこはそれなりにキープできると。

あとはP-MAXやデータへの理解が大切ですね。このあたり、顧客の状態変化と顧客データを繋げ、すべてを理解して組織マネジメントしなきゃいけないけど、それをできる人なんてスーパーマンですよね。

田中
田中

そうですね。かつ運用型広告の肝って、コンバージョンの計測がちゃんとできているっていうことが前提なんですよ。自動入札が働かないので。逆に言うとコンバージョン計測ができてれば、あとはもう本当にクリエイティブだけっていう世界がわりと近い将来になる。しかもそれも生成AIが出てきたので、おっしゃってたように自動化される未来もあるっていう。

Googleだけですけどね。多分こうなっちゃってるの。あとはMicrosoftぐらいなんですけど。

丸山
丸山

このあたりをある程度整理して、テレビでどうするのかとか、メディアの広告出稿、記事広告とかをどう使っていくのかということを、広報と一緒に連動して運用して、進める必要があると。こりゃ田中さんみたいな方と話しながら進めないと、かなり難しそうですね。

田中
田中

そうじゃなくても顧客リストの取り扱い一つにとっても、プライバシーポリシーの改定と個人情報保護の遵守が必要となっているので、法務を動かすだけでこれまた1ヶ月かかるとかあるんですよ。

丸山
丸山

お話を聞けば聞くほど、データ数も必要だし、大企業と中小企業の差が出てしまう気がしました。たとえば明確なウェブ担当者がいない中小企業がそういう広告について把握して…というのは難しい気がするんですよね。

田中
田中

よくP-MAX1個あればいいよっていう話もあるんですけど、これは仕組みを知れば知るほど一つにするのが結構難しいんですよ。それだったら、普通に検索広告だけやった方が楽かもしれないみたいなこともあったりして。

丸山
丸山

そうですよね。お客さんによっては、地元のラジオに出してとけばうまくいってる感じがあればそれでいいという感じですよね。

田中
田中

店舗集客だったらチラシをポスティングした方がいいよね、みたいな。昔と今を比べてデジタルになったからといって、アナログを捨ててはいけないということですよね。

一般的なAdSenseメディアはどうなる?

丸山
丸山

Googleのサイトネットワークに提携しているメディアってどうなるんですかね?

たとえば日経はAdSenseは使っていないかもしれないですけど、Google.comのCookieはサードパーティCookieになるので、海外だったらもうNGですし、日本ももうすぐNGですよね。そうするとAdSense枠のセールを高めようと思えば、Googleにログインしているユーザーだったら、さっきのプライバシーサンドボックスっていうのが動く感じなんですかね。

田中
田中

そうですねプライバシーサンドボックスの何なのかな。Topics APIとかかな。

Chromeでもゲストモードを使ってみると広告が変わると思いますよ。

丸山
丸山

ゲストモード?

田中
田中

プロフィールのアイコンを押すと、ゲストモードっていうのがあります。これは完全にCookieとか何もないはずななので、おそらく他の広告が出てくるんじゃないかなと。シークレットモードでは結局ログインはしてるので、出てしまう可能性はありますね。

丸山
丸山

なるほど、確かに広告が変わりましたね。これは面白いです。

田中
田中

技術的に資料が公開されていないので、感覚値で話してる部分が多いですが、GoogleにとってはCookieを閉じられたからといって影響をめちゃくちゃ受けるのかというと、意外とそうならないかもしれない。P-MAXをどんどん進めていけばっていう前提ですし、Googleにログインせずに使ってる人もいるので、100%捕捉できるっていうわけではないですけど、そこはプライバシーサンドボックスを使って補うっていう感じになるのかな。

ファーストパーティCookieを拒否されたら?

丸山
丸山

最近だとユーザー範囲が海外にまで広がるとファーストパーティCookieすら拒否できるじゃないですか。例えばここのトラッキング嫌よって言った場合は、基本的にどの流入元から入ってきた人をコンバージョンしたのかって捕捉する手段がないですよね。こういう場合はどうしていくのが理想でしょう?

田中
田中

実はGoogle限定で同意モードっていう機能を作っていて、GoogleアナリティクスとGoogle広告のCookieに関しては、CMP(コンセントマネジメントプラットフォーム)が同意バナーを出すっていう機能がありますよね。それと連動して、同意をしなくても、pingのシグナルをGoogleに送って、Cookieがない中でも、アクティビティを推定しモデリングして、データを補完するみたいな機能があるんですよ。

これはCookieの同意を拒否しても、個人が識別されない範囲でトラッキングを行えるっていうものなので、もしかするとそういったものが広まっていくのかなっていう気はしています。

丸山
丸山

なるほど。

田中
田中

Googleのプロダクトに限ってだけなので影響範囲としてはすごく小さいはずだから、広がらない可能性もあるんですけど、技術的にはそういったものもあります。GA4のデータを補うとか広告のコンバージョンデータを補うことはできるんですけど、あくまでもGoogleのその2プロダクトだけなので、お金をかけた割には…っていうことにはなりやすいですね。

リテールメディアはどこまで使えるのか?

丸山
丸山

Criteo(クリテオ)はリテールメディアにシフトしてきている感じですが、そちらはどうなんでしょうか?

田中
田中

確かにCookieには依存されないんすけど。リテールメディアはリテールメディアで、僕はどうなのかなっていう気持ちがあって。

リテールメディアって、広告を売る側と買う側で成り立ってるじゃないですか。リテールメディアは広告を売る側なんですけど、ここで言う買う側、いわゆるセルサイドって、その商品を提供してるブランドのはずなんですよね。彼らがお金を払って広告を出したいと思うかなっていう。

大手は出すんでしょうけど、小さいリテールメディアができたとき、そこにどうやって広告を出してもらって入札してみたいな仕組みがまだまだ未熟なので、技術的にはできるんですけど、日本で普及するのはだいぶまだ先な気がしています。

丸山
丸山

最大のメディアの例えがAmazonだとして、Amazonは凄まじい数のファーストパーティーデータを持っていて、この人は多分この商品に興味を持ってますみたいなところが明確なので、そこにだったら多分小さな企業も自分たちの商品のこれに似たようなやつに広告を出してくれっていうのは、通る気はするんですけど。おっしゃるように小さいサイトであればあるほど、興味関心別にファーストパーティデータはそんな持ってないでしょうしね。

田中
田中

広告管理の側で、その小さいものを束ねて管理するのはできると思うんですけど、そのあたりの属性のぶれとかはどうなんだろうって。月収100万のサイトに大手がお金を出すのか?っていう話です。

丸山
丸山

そしたらAdSenseでいいやって、なりますよね。

Googleに同情する二人

丸山
丸山

先日、WordCamp Kansai 2024にいってきて、その時に「僕はMicrosoftよりGoogleが好きなんです」と言っている人がいました。僕も同じで、Googleってある程度「善意」っていうのかな。なかなか表現というか定義することが難しいですけど、少なくとも悪いことをしないようにっていう前提があって、個人情報を自分たちが握るからには、なるべく良い世界を目指したいという方向性で動いてた会社だろうなっていう認識が僕はあるんですよ。それが一気に、EUのあの戦いに巻き込まれちゃって。

善意の支配って表現でいいのかわかんないですけど、コントロールして情報の整理をしようとしてた部分をかっさらわれちゃったと。AIに関しても慎重論だったのに、ゲリラ戦みたいに仕掛けられてしまったので、もうここは開放するしかないみたいな感じで追い込まれていく。そうすると営利企業なので利益を上げるしかないから、どんどん無料のものは削って行かざるを得なくて。今まで、善意としてボランティアでやっていた分を全部削っていったと。

田中
田中

そうですよね。本当にそんな感覚があるのと、今後そのAIで負けると市場からすごいひどい評価を受けて株価が下がることになるって考えると、AIへの投資はめちゃくちゃ進む。でも、頑張れば頑張るほど、設備コストもかかるし維持コストも上がるので、広告だけで賄えないぐらいになるんじゃないかなと。そうしている間に、結構儲かっている企業なのに、リストラが進んでいるっていうのは、人がAIに切り替わった最たる例だと思うんですよね。

自分で自分のことを言ってるのかな?みたいなくらい、もう先頭を行くレベルでAIへの切り替えをしていると思うんです。

丸山
丸山

何か良くない方向に行ってるって感じるところはありますよね。

僕が思っているのは、実はビッグテックが、もし仮に我々よりも数段よいプログラミングの生成AIを持ってるとすると、かなりの割合で自動化をしていく方向に進むだろうなと。いわゆるトップ層は必要なので残りますけど、そうじゃない人たちが機械的にやっていた部分については、その多くをAIに置き換えていくしかないという。

人件費を下げていってビッグテックの争いになると、マシンコストですよね。今のインフラのコストが賄い切れる分ぐらい収益を上げて、AIが世界を牛耳ってくる。みんながAIに聞くような時代が来ると、そんなマシンを持ってる企業数はもう数が限られてきますから。そこが膨大なAI税みたいなのを取っていくような仕組みに変わっていき、余った人間が何をするのかっていうと人間らしいことをする。

田中
田中

今は20ドル前後でAIが使えているじゃないですか。この値段で提供できてるのはおそらく、Googleであれば広告収入もあるからこそ、ある程度安く提供できるのだろうし。
オープンAIも今の維持開発コストの中での価格設定してるんでしょうし、これが大きくなってくるってことは、きっと今の価格で転化できなくなってくるので、今は価格面で簡単に使えているけど、将来的にめちゃくちゃお金を取られる可能性はありますよね。

AIイケイケだけど、本当にこのままずっとイケイケなのかなって考えると…わかんないですよね。

CDPとかいろいろな話

丸山
丸山

たくさん話しましたが、まだテーマって残っていましたっけ?

田中
田中

CDP(Customer Data Platform)の話をしてないですね。CDPはP-MAXをちゃんと動かすとかターゲティングの精度を上げたりとか類似を見るっていう意味では、ファーストパーティデータを使わなきゃいけないので、これは確実に安いものが出てくればみんなが使うだろうなと思っています。

丸山
丸山

僕もすごく興味があって、パーソナライゼーションというのは脚光を浴びつつあるみたいな感覚です。

田中
田中

でも、ボリュームが限られてますからね。カスタマーデータなんてほとんどの企業で数千ぐらいのレベルで。それを使ってターゲティングをしたところでというのがあるので、もっと違うことをやった方が良い気はするなってのはありますね。必要だとは思うのですが。

丸山
丸山

ちなみにP-MAXだと、どれぐらいのデータがなきゃいけないみたいな閾値みたいのってあったりするんですか?

田中
田中

閾値はないんですけども、Google広告のカスタマーマッチだと確か1000件ぐらいの有効なデータがないといけないので、それが目安ですね。

そのくらいないと、どうしてもばらつきが出ちゃうのと、少数すぎると個人が特定できてしまうので、基本的には彼らの中で基準を設けてます。

丸山
丸山

そこはGoogleは言い張るために頑張らないといけないんですね。

田中
田中

だから、レポートを検索語句ごとに見ても、個人が特定できそうなものは、「その他」って分類をされて、フィルターをかけられちゃうんですよ。GA4の閾値みたいなものです。

丸山
丸山

個人的には昔に議論が戻った感があるんですよね。CRMが大切だって言ってた時代に。

田中
田中

顧客既存リストを何回も使ったところで新規が増えないので、バランスを見ないといけないんだとは思いますけど、おそらくCRMだけに復権するっていう感じではないはずです。

丸山
丸山

冒頭のお話でもあったように、CRMの拡張というか、自分たちが一体どんな商売をしていて、誰に向けて何を発信したいのかっていう部分を理解し、多分こういうことが起こるからこうだろう、というような会話ができる方と進められるような企業であれば、おそらくその意味を正しく把握して運営ができるんでしょうけど。一般的には、さっきのP-MAXもそうですけど、ツールを入れたら何とかなるって感覚で動くじゃないですか。

田中
田中

そうですね、何かツールとか広告を作ったら、売れるんでしょ?っていう。売れるんですけどやり方よ…っていう話。

丸山
丸山

そうすると、やはり全員がうまくいくって難しいですよね。

田中
田中

運営堂の森野さんとかわかりやすいですよね。その規模だったら、GA4やウェブサイトのアクセス解析すら要らないって言ってるようなものなので。

丸山
丸山

あの人は最初からいらんって言ってましたよ。初めて会ったのが10何年前のアナリティクスアソシエーションが最初に立ち上がるときですね。それが面白いなと思って声をかけたのが出会ったきっかけです。

森野さんでいうとCookie同意のバナーを入れた話ってしましたっけ?入れたらGA4でとれるデータが激減して「毎日異常値」っていうメールが来たという。

運営堂ブログより

https://www.uneidou.com/21211.php
田中
田中

以前に、CMP(Consent Management Platform)を入れたことがあるんですよ。でも、アクセス数が半分以下ぐらいになって。どうにかならないかと相談されたのですが、ちゃんとやったんだからある程度はしょうがないんですって言ったんですけど、まぁ困りますよねぇ。

丸山
丸山

じゃあ、体感されてるんですね。毎日異常値。

田中
田中

してます…。

丸山
丸山

うちのQAアナリティクスだと自社解析サーバーになるんで、基本的にIPベースのトラッキングができてブラウザーブロックもないので、継続はできるんですよね。どうしても外に飛ばすと第三者提供になっちゃいますし、GA4のデータはGoogleが使いますって明確に書いてありますからね

田中
田中

そうですよね。

丸山
丸山

そこでうちのツールとしては、Cookieレスでも、まずは普通にデータとして取れますよっていうのをきっかけに、入れてもらおうっていうふうにはなっているんですけど。

最終的に目指していきたいのは、データが取れた先に、何を示唆として出せるのか?っていうところです。

田中
田中

GA4のログイン後のダッシュボードに、時間別とかいろいろカードがあるのは、多分そういうことなんだろうなって思いましたね。あれって最初に必ず出るじゃないですか。ホームがあって、おすすめがあって、表示回数ユーザーセッション、あと分析情報がある。こういうのをちゃんと見なさいっていうのを意識的に、無意識のうちに目を向けさせてるのかな。

丸山
丸山

確かに。そういうところをツールとしてやっていけたら、みたいなところですかね。

今日はいろんなテーマがあったんですけど楽しかったです!またお願いしたいです。

田中
田中

僕も楽しかったです!

何かお話できるがことあればいつでも。

丸山さんから田中さんと対談するとだけ聞いていて、むちゃくちゃ楽しかった!という感想とともに動画が送られてきました。うん、確かに楽しそうに話している実際の話も楽しかったです。

ただし…、雑談すぎて記事にするのがとっても大変だったことだけは伝えたいです(笑)

執筆:運営堂の森野