運営堂の森野さんと定期的にお話ししている雑談シリーズ。前回の「頑張っているのに、なぜ制作会社は儲からないのか?」シリーズでは、制作会社が下請けから脱却し、クライアントのビジネス全体を設計する『建築家』になるべきだという結論に至りました。今回はその続編として、話題沸騰中のClaude Codeを現場で使い倒してみてわかった「AIの限界」と、そこから見えてきた「AI時代における人間の本当の価値」について語り合いました。
目次
最先端AIは「部分最適の天才」で「全体設計のアホ」?

今って最新Claude Codeを使えないと時代遅れみたいな話がありますよね?確かにこのQAシリーズの開発でもClaude Codeなどにドキュメントや設計書を書いてもらったり、開発をやってもらったりしています。ただ、正直に言うと、Claude Codeは相当アホですよ(笑)。

「最先端AIは相当アホ」って、そのタイトルの記事は相当面白いですね(笑)。何がダメなんですか?

AIが作ったコードをGitHubに上げて、それをDevinという別のAIにレビューさせると、バグだらけだと指摘されるんです。で、Claudeは「急いで直します!」と言って修正するんですが、直したコードを見ると、今度は別の箇所と全然繋がっていなくて、全く動かないコードをひたすら量産してしまうんですよ。

なるほど、全体が見えていないんですね。

そうなんです。AIは「部分最適」というか、与えられた局所戦の天才みたいなもので、その文脈では確かに正しいんだけど、全体として繋がっていないものをバーっと作ってしまうんです。
人の役割は、AIが作りやすくなる「ガードレール(基礎構造)」を作ること

じゃあ、そのままAIに丸投げするのは無理ですね。どうやってコントロールしているんですか?

AIがミスしないように、繋ぎ止める設計を「ガードレール」のように人間が作ってあげる必要があります。流行言葉ではハーネスエンジニアリングといわれて、まぁそれよりも私のイメージは庭師に近いんですけど、やっていることは「このデータ構造と状態管理からは絶対に外れないように」という基礎構造の設計を、人間とAIで相談して先にガチガチに固めます。

家づくりに例えると、建築家として全体の設計骨格は絶対にずらさないようにして、一部の内装のペンキ塗りだけをAIに任せるイメージですね。

まさにその通りです。家を建てる時って、出来上がるまでクライアント自身も「本当に欲しかったもの」が分からなかったりしますよね。建築家はそれを見越して設計するんですが、そもそも建てたいもの自体が会話の中でかわっていくし、それが故AI丸投げでは非常に難しいので、どうしても人間が先導してやるしかないんです。
造船所の「とんかち」に学ぶ、人間にしかできない『気づき』の価値

結局、人間の経験や勘に依存する部分は大きいですよね。

以前、造船所の仕事をしていたんですが、巨大な船を浸水させる前に、熟練のおじいちゃん職人がとんかちで船のあちこちを叩いて回るんです。その「音」を聞いただけで、どこに不具合があるか気づくんだと。これって、五感で情報を統合して違和感に気づいているわけで、絶対に言語化もAI化もできない神業ですよね。

Webマーケティングでも同じです。GA4のレポートをAIに自動で作らせたとしても、「それを相手にどう見せるか」「どう話すか」は、相手のフェーズや状況によって毎回変わります。AIに丸投げしても出てこなくて、やはりここには文脈を理解した勘みたいなものがある。

そうですよね。相手の文脈を理解して「気づく」力は、AIには移植不可能です。

ただ、AIに答えを丸投げしない使い方はあって。私は、Looker Studioのデータに加えてAIも一緒に納品していて、事前にPDFにしてAIに読み込ませ、自分が気になったところをメモしておいて、「データはこう出たけど、肌感覚的にどうですか?」と、逆にAIから人間に質問させるようにしています。AIに答えを出させるのではなく、人間が気づくための壁打ち相手としてAIはとても優秀です。そして、何か疑問が出て解決しなかったら森野に聞いてね、とAIが言うようになっています。

なるほど。それは高度なコンサルティングノウハウですね。面白いです。
AI丸投げではなく「信頼できる人 with AI」に投げる

そう考えると、今のAIに丸投げだったり、逆にAIに仕事を奪われるというのは、半分あたりだけど半分は違いますよね。AIに完全に丸投げした場合って、「どこか間違ってるんじゃないか」と疑ってかからないといけないから、実は全然楽にならない。

間違いないです。だから結局、安心できる「人間」にお願いするのが一番いいんですよ。私も最近、アシスタントさんに業務をお願いするようになったんですが、この人はちゃんとやってくれるという信頼があるから、チェックの時の気持ちの持ち方が全然違います。

それは大きいですね。

アシスタントさんのおかげで自分の業務を棚卸しして細かく分解できるようになり、頭の中から「タスクを抱えている」というプレッシャーがなくなりました。AIに全振りするより、信頼できる人との関係性の中で仕事を分解していく方が、心理的にもすごく前向きになれます。

実はうちも、以前手伝ってくれていたスタッフの女性が、子育ての手が離れて戻ってきてくれることになったんです。一人で抱え込まずに、そういう信頼できる人に仕事を分解して渡していくスタイルにシフトしていきたいですね。結局、そういう信頼できる人がAIを使うとすごいわけで。
SNSの「AI万能論」に踊らされず、目の前の顧客に向き合う

X(旧Twitter)とかWeb業界の界隈だけを見ていると、AI驚き屋みたいな人が「AIで何でもできる!」と騒いでいて、すごく流行っているように見えますよね。でも、一歩外に出て実際のお客さんと話していると、AIなんて全然流行ってないですよ。

本当にそうですね。私がいまAIを使って開発を手伝っているシステム案件でも、そのシステムの対象ユーザーは自分の仕事が楽になればなんでもよくて、AIがほしいわけではない。逆に大卒の賢すぎる人達が作ったような複雑なシステムは現場の人たちから「難しすぎる」と嫌がられています。人に向き合って分かりやすいものを作っていくほうが、よっぽどブルーオーシャンだと感じます。

大多数のお客さんはそっち(AIを使っていない層)なんですから、SNSの極端なAI万能論に距離を置き、人間らしい泥臭い仕事に目を向けた方がいいですよね。

ええ。AIの限界を理解しつつ、自分たちは「建築家」として顧客の文脈を理解し、信頼できるチーム with AIで仕事を進めていく。結局、それが一番の生き残る道になりそうです。森野さん、今回もありがとうございました!

