GA4は、どこへ向かうのか?
今回はDDMA Analytics Summitで語られたGoogleアナリティクスのロードマップをご紹介します。GoogleのプロダクトマネージャーCarly Boddy氏がニューヨークからやってきて、今後の方向性が示されました。
なおGA4以外のセッションの内容はこちらでご紹介しています。
目次
サマリー
全体を通して見えてきたのは、GA4は定量データツール、広告効果測定ツールとして進化を遂げようとしていることです。またミドルクラスの企業にも使いやすくしたいという意図が見えました。
ただ、今回私が特に参加して良かったと思ったのは、その後のQ&Aセッションです。
参加者から「GA4はわざと使いづらくしていない?/UAからGA4への移行は酷かったんだけど?」のような、いかにも海外らしい直球の質問が飛び交いました。それにCarly氏も誠実に返していったので、ロードマップの見え方がかなり変わりました。(Q&Aはぜひ見て貰いたいです!)
サマリーとしてNotebookLMがまとめてくれた内容を書いておきます。Geminiなのに、なかなかリアリティのある内容です。
Googleが描くロードマップは、GA単体でユーザーが快適にアクセス解析を行うためのUI投資というよりも、「Google Adsへの配信精度を高めるためのファーストパーティデータ収集」や「BigQuery/Cloudエコシステムへのデータ接続」に向けたプラットフォーム側の都合が強く反映されていると言えます。
ミドルレンジ企業の現場としては、こうした「夢のようなロードマップ」の表面的なアピールに惑わされず、「どこまでが標準UIで可能で、どこからが開発・実装の壁になるのか」を冷ややかに見極める姿勢が不可欠です。
※Notebook LMのまとめ
それでは、以下で具体的に内容を掘り下げていきます。
UAの再現から、GA4独自の進化へ。その4つのポイント
これはQ&Aセッションでわかったのですが、今まで背景にあったのが、ユニバーサルアナリティクス(UA)からGA4への移行です。
移行対応のために8か月にわたり毎日の会議を続けた(ご本人曰くトラウマ)という話が紹介されました。使う側も大変でしたが、提供する側も大変だったようです。
ただそれも一段落し、今後は、UAでできたことをGA4で再現する段階を越え、AI、予測、複数の広告媒体をまたぐ計測へ開発の力を向けていく、とのことです。
その方向性は、次の4つの柱に整理できます。
| 柱 | 目指していること |
|---|---|
| 1. データを強くする | Webタグに加え、CRMや店舗などのデータを取り込む |
| 2. AI分析 | 自然言語で質問し、変化の発見やレポート作成を助けてもらう |
| 3. 広告予算の計画 | Google以外の広告も含め、投資配分を考える |
| 4. 予測する | 予測した行動をもとに、広告などの対象者をつくる |
1.データを強くする

一つ目は、データの入口を広げることです。
Webサイトのタグから取れる情報だけでは、その後の商談や店舗での購入まで分かりません。CRMにある顧客情報、POSにある販売情報、クラウドやスプレッドシートに置かれたデータ。こうした情報を取り込むための中心として紹介されたのが「Data Manager(2027年登場予定)」です。
複数の入口を用意すると、同じ購入がWeb側と販売システム側の両方から届くこともあります。そこで必要になるのが重複の除外です。資料では、購入時のトランザクションIDによる重複除外を、イベント名とイベントIDを使う形へ広げていく方向が示されました。
もう一つが、ユーザー提供データ(UPD:User Provided Data)の活用です。ハッシュ化したメールアドレスなどを使い、データの照合や広告計測を強化する考え方で、Client IDだけに依存しない取り込みも扱われました。
ここで注目したいのは、AIの前に、AIが読むデータを整える話があることです。Web上の行動と事業側の成果が離れたままでは、分析できることにも限界がある。その土台を広げる構想として読むと、後のAIや予測の話につながります。
2.AIに聞きながら使う

二つ目はGeminiを使った分析支援です。資料では、大きく3つの使い方が示されていました。
- 先に教えてくれる:ホーム画面などで変化や異常を見つけ、注目点を提示する。
- 聞くと答えてくれる:「Ask Advisor」に自然言語で質問し、分析を進める。
- 画面をつくってくれる:質問や指示から、ダッシュボードを生成する。
たとえば「先週、売上が落ちたのはなぜか」と聞き、そこから流入元や商品別の数字へ掘り下げていく。どのレポートを開くか探す時間が減るだけでも、使う人は増えそうです。
ただし後ほどのQ&Aセッションでも触れますが、AIは数値データしか見ないため、ビジネス文脈の理解ができず、ハルシネーション(誤った分析)を起こすリスクが指摘され、これをCarly氏も課題として認めていました。
3.広告予算の計画

三つ目は、広告投資全体を見るための機能です。
Meta、TikTok、Pinterestなどのコストや表示回数を取り込み、Google広告も含めて評価する。そのうえで、どこに予算を配分するか考える方向です。キャンペーンデータの取り込みは、すでに公式ヘルプでも案内されています。Google公式:キャンペーンデータのインポート
さらに資料では、広告の効果を見る3つの方法を組み合わせる構想が説明されました。
| 方法 | 何を見るか |
|---|---|
| データドリブンアトリビューション(DDA) | 成果につながるまでの接点に、貢献度を割り当てる |
| インクリメンタリティ | その広告がなかった場合と比べ、成果がどれだけ増えたかを確かめる |
| マーケティング・ミックス・モデリング(MMM) | 集計データから広告などの影響を推定し、予算配分を考える |
MMMでは、Googleの「Meridian」をGAの中で使う話もありましたが、これは有償版360の機能になる(Q&Aセッションからの推測)ようです。
前回紹介したJust Eat Takeaway.comの講座でも、この3つをどう組み合わせるかがテーマになっていました。Googleも、複数の測定方法を広告の判断へつなげる方向に進んでいます。
4.予測する

四つ目は、分析した結果を使うところです。
ロードマップでは、購入を中心とした予測から、任意のキーイベントへ対象を広げていく方向が示されました。
たとえば、購入だけでなく、問い合わせや会員登録につながりそうな人を考える。さらにAIがデータを読み、オーディエンスをつくる条件を提案する(カスタムオーディエンス)。こうした使い方が構想されています。
データを集めて終わり、レポートを見て終わりにせず、その先の施策までつなぐ。4つの柱を通して見ると、Googleがどこへ進みたいのかが分かります。
Q&Aで見えたロードマップの実体
ここまでがプレゼンテーションの内容です。ここから私が特に面白いと思ったQ&Aです。海外だけに遠慮がありませんでした(特にオランダは合理主義の国として知られています)。以下にご紹介します。(※私の方で要約したもので、ご本人の直接の言葉ではありません)
Q.GoogleはユーザーをBigQueryへ追い込むために、わざとGA4を使いづらくしているのでは?
我々も巨大組織ですし、社内はそんなに統制がとれておらず、そこまでの密かな戦略や先見の明はありません。実際にChromeチームがサードパーティCookie廃止を撤回した時も、我々はニュースをみて初めて知りました。つまりみなさんと一緒です笑。
Q.UAからGA4の移行に我々は苦しんだのだけど、あれって実際どうでしたか?
「二度と経験したくないトラウマのような時間」でした。機能の同等性(パラティ)が足りないためユーザーが直前まで移行してくれず、期限直前になって一気に大量の修正要望や不満が殺到しました。約8ヶ月間、毎日対策室の会議を開いて対応にあたっていました。現在はUA機能の再現フェーズを脱し、ようやく未来に向けた新しい機能開発ができる状態になっています。
Q.UI改善は誰向けですか?BigQueryとの方向性は?
GA4は無料のプラットフォームであり、ユーザー層は多様です。BigQueryやAPIしか使わない高度なユーザーも多く、それが機能しているなら全く問題ありません。2027年に向けたUI投資は、主に「UI上で分析を行いたい中級・カジュアル層(middle knowledge user)」を対象にしています。我々もUI機能がすべての高度なユーザーのニーズを満たせるとは考えていませんので、そこはBigQueryとの棲み分けになります。
Q.AIはGA4の数値だけで判断するので、むしろハルシネーション(誤った分析)の可能性が高いのでは?
そこは課題です。まずAIはガバナンスの問題から、ログインユーザーのアクセス権限に従って閲覧できる数値データを参照し、ビジネスコンテキストのような付加情報を持ちません。この課題に対して、現在はアノテーションを活用してもらうような方向性を考えていますが、まだ十分なアイディアがなく、フィードバックを求めています。
Q.新設の「AI Assistants」チャネルのAI経由の判定ロジックはどうなっていますか?
判定ロジックは従来通りUTMパラメータとリファラー(参照元URL)の文字列パターン照合に基づいています(主要20以上のAIアシスタントを定義)。
Google検索内の「AI Mode」からの流入は「AI Assistants」ではなく、「Organic Search(自然検索)」に分類されます。gemini.google.comなどの直接的なAIサービスからの流入が「AI Assistants」に分類されます。
Q.発表でフルカスタマージャーニーを追えるとありましたが、個人をトラッキングできるのですか?
資料に問題があったかも知れません。個人ユーザーレベルやイベントレベルでの追跡はできません。チャネル・キャンペーン単位で集計されたコストやインプレッションデータを合算して取り込み、全体としての広告最適化を推測・判断していきます。
※質問者より追加:発表の資料だと、まるでフルカスタマージャーニーが追えるように見えてしまい、今苦労していることが解決するかのように思えます。集計データであると明示してほしいです。→わかりました。
Q. MMMは、無料版GA4でも使えるのですか?
使えません。オーガニックやテレビCMなどを含めた本格的なMMMを検討する場合は360(有償版)やGoogle Meridianなどを使って独自実装することを推奨します。
Q.SNSチャネルの評価をする場合に、購入(最終目的)をキーイベントにしていてよいと思いますか?
実際のビジネス成果である「購入」や「オフラインコンバージョン」をそのままキーイベントに設定することを推奨します。アトリビューションモデルは、インプレッションやアッパーファネルの接触から最終的な購入・コンバージョンまでのジャーニー全体を考慮して貢献度を割り当てます。
Q.競合ベンチマークはどの指標で使えますか?自社で特定の競合を指定できますか?
標準レポートに表示されます。ダッシュボードには未対応です。比較対象となる競合セット(サブバーティカル)はGoogleが自動割り当てします。特定の競合をユーザーが直接選択できる仕様にすることはありません(データプライバシー保護のため)。
Q.Google広告のコンバージョンタグは、今でも必要なのですか?どちらを使うべきですか?
計測環境によりますが、重要なのは「GAとGoogle Ads間のコンバージョンモデリングの乖離(差異)を解消した」という点です。以前のように「GA経由だと精度が落ちる」というデメリットはなくなりました。クロスチャネルでのアトリビューション評価・意思決定を行いたいなら「GA」、Google広告単体での最適化・自動入札に専念するなら「Google Ads」のデータを基準にするのが基本的な使い分けです。
ヒアリング:GA4は欧州で使われているのか?

今回の発表に加えて、私が参加者に聞いた内容を加えます。
欧州でもGA4を使っているの?→ほぼYes
プライバシーや同意についてこれだけ議論している欧州なので、実際にGA4を使っているのか気になって聞いてみたところ、多くの人がYesでした。そこで、本イベントのスポンサーでもあったPianoのような別のツールを使おうと思ったことはないか、と聞いてみました。
返ってきたのは、「Pianoは高いし、ツールを変えたら同意についてもまた考えなければならない。それならGA4で十分かなと思ってしまう。GA4は無料だしね」という感じの話でした。一方で、きちんと取り組むならPianoを使うべきだと思う、という評価もありました。これは日本でもほぼ一緒な気がします。
Microsoft Clarityは?→No
Microsoft Clarityについても聞きました。私が話した範囲では、知っているけれど、同意の扱いがややこしそうなので使っていない、という話が多かったです。確かにClarityはブラウザからデータを米国に送信するので、欧州では危ないという判断になりそうです。
制約条件が人の行動をかえる
ここから先は、前回の講演や参加者との会話をつなげた感想です。
まず欧州の人と日本が違うかというと、実は人としての判断はほとんど一緒でした(GA4に不満はあるけど無料だから使うとか)。
では何が違ったかというと、「制約条件」が違うんです。欧州は同意をとらなければならず、米国への警戒心も強い。それがツール利用の違いや質問に出てきます。
所感「アナリティクスは3分野で生まれ変わる」
ここまでを振り返って、私の所感です。
アナリティクス・サミットは大企業のものだった
今回のイベントは、アナリティクス・サミットでしたが、その興味関心の主軸は「定量データ中心の意思決定(主にチャネル最適化)」と「CRM中心のカスタマイゼーション」に主眼が置かれた内容でした。これは参加者が大企業の実務者が多いからで、データアナリストが揃っていたからだと思います。
面白いのは「サイト改善/育成」に関するトピックがほぼなかったことです。これも興味関心と日々の業務の違いだと思います。そしてGA4のロードマップもそちらを向いています。
これまで「アナリティクス」「データ活用」という言葉の中で一緒に語られていましたが、よく考えてみると、立場によって制約条件は違い、取り組まなければいけない課題が違います。
| やりたいこと | データを使って進めたい仕事 | 私が考えるデータの役割 |
|---|---|---|
| サイトを育てる | 訪問者の反応を見ながら、内容や導線を変え、また試す | クリエイティブ系の反応データやユーザーのサイト内行動データが重要。まだ発展途上でこれから進化する領域 |
| 広告成果を高める 意思決定をする | 広告やチャネルの貢献や増分効果を測り、予算・経営資源の配分・配信を改善する | 今回のGA4ロードマップや、MMMなどの測定手法が力を発揮する領域。定量データとビッグテックによる個人トラッキングの世界 |
| 1人1人にパーソナライズする | 契約や購入、問い合わせなどの関係を踏まえ、一人ひとりに対応する | CRMを中心に、必要に応じてCDPなどでデータをつなぐ領域。同意の取得とAIによるサービス進化が期待される領域 |
今回、サイトを育てるというテーマの講演がなかったのは、参加者の担当業務の範囲外ということもあると思いますが、アナリティクスという言葉に引っ張られたことも関係している気がします。そもそも定量データが重宝されてきた歴史があります。
定量的な分野はGA4が進化する
今回のロードマップが示すように、定量的なチャネルの分析や広告効果の分析は、まさにGA4が進んでいく道です。この分野は巨大組織になれば、法律とテクノロジーとデータリテラシーとAIが絡む難しい分野ではありますが、逆にいえば、できる人は限られ、今回のAnalytics Summitのような熱量が生まれます。前編の講座でも触れられていましたが、ビジネスコンテキストの注入は人間にしかできないと感じますし、今回のQ&AにあったようにGA4のAIだけに判断させていては危ない分野です。
「サイトを育てる」という新分野
オランダで元Molocoの坂本さんとお話しをした時に気づかされたのですが「今のウェブサイトって全部メリット重視でつまらなくないです?漫画の世界だともう趣味で細分化されているし、いろいろあるんですよね」という話しがありました。
ひょっとすると我々は、無意識のうちにウェブサイトをかなり狭い範囲で捉えているのかもしれません。AIにより総クリエイター時代になるならば、もっと属人的なサービスがあってもおかしくありません。そうなった時に武器になるのは、定量データではなく、むしろ定性的なデータの循環です。
日本のa2iがファイナルシーズンを迎えるというニュースは、私にとってとてもショックでしたし、私自身がこの分野で食べている人間なので、何か時代が終わってしまったような気がしていました。確かにGA4に対しては、欧州でも微妙な諦めムードが漂っています。
ただ一方で私は現在QAシリーズを作っていて、もちろんアナリティクスが終わったとは思っておらず、むしろ希望があるから作っています。
その言語化ができていなかったのですが、今回ようやくわかったのは、「アナリティクスは3分野でそれぞれ生まれ変わる」ということです。そしてそれぞれのツールにやるべきことがあり、それぞれの方向性で進化していくのではないかと。
我々QAは、「サイトを育てる」という目的に向けてウェブサイト運営をデータを中心とした育成ゲームのようにしたいと思っています。そんな思いで、11月の東京イベントの案内ページはちょっと遊び心のある絵にしました。よろしければぜひ遊びにきてください。
オンライン・ランチセッションのお知らせ( PDF資料付き )
文章に書き切れない所感や肌感覚の仮説は、10月14日(水)のオンライン・ランチセッションでもお話しする予定です。アンケートのご回答者には全8講演をまとめたPDF資料も差し上げます。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
